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成人にみられるスポーツに関連する疾患

成人にみられるスポーツに関連する疾患(新型コロナに対して)

 

                                                    田原整形外科 院長 田原敬士

 

近年、スポーツは競技スポーツ・趣味のスポーツ・健康のためのスポーツとさまざまな形で社会に受け入れられてきました。そして、スポーツをする人の数の増加に伴い、スポーツによる外傷や障害も増加し、その予防法や治療法についての正しい情報の提供が求められています。
2020年はオリンピックが東京で開催され、スポーツが特に活発になる年になる予定でしたが、新型コロナの発生が、世界中を一変させました。
世界中のあらゆるスポーツが中止になるという、前代未聞の事態になっています。感染症のパンデミックの恐ろしさを痛感しています。
新型コロナウイルスの感染拡大の防止には、人と人の接触を8割程度減らすことが必要とされています。世界中で外出規制が行われ全世界の人々に身体的、精神的に強いストレスがかかっています。
精神的ストレスを長く受け続けると、#脳由来神経栄養因子(以下BDNF)が減ってしまい、脳や神経に栄養が行き渡らなくなり、心の病気に深く関わっている海馬の神経細胞が破壊されます。BDNFを増やし身体的・精神的な健康を維持するには運動を行うことが大切です。
#(脳由来神経栄養因子:記憶をつかさどる海馬に多く存在し,新しい神経をつくり成長させる)

 

運動がもたらす健康効果には、
1. ダイエット等の減量効果
2. 血糖値改善などの身体の健全化
3. ストレス解消などの心の健康効果
4. 感染症やガン予防などの免疫力亢進 (白血球のナチュラルキラー細胞運動を活性化)

 

等があります。
筋肉からの効果として、運動すると末梢の筋肉の中からBDNFを作るmRNAが発現します。
有酸素運動には脳の海馬を大きくする効果があります。
また骨からの効果としては運動による骨への荷重刺激で
骨からのオステオカルシンが海馬を刺激して記憶力アップし若返りを図る
骨からのオステオポンチンが免疫力向上させる等の効果があります。
外出自粛が続き屋内で過ごす時間が長くなると活動量が低下し、体力の低下、生活習慣病の発症や生活機能の低下を来すリスクが高まります。
このため意識的に運動・スポーツに取り組むことが必要です。

 

外出自粛による運動不足と過食による体重増加、精神的なストレスにより腰痛を出現する方が多くなっています。背骨(脊柱)は、横から見ると、ゆるやかなS字のカーブを描いています。このカーブがあることで、上半身の重さが分散され、腰にかかる負担が軽くなります。
この脊柱は腰椎の前側にある「腹筋」、腰椎の後ろ側にある「背筋」で腰椎を支え脊柱のS字カーブを維持しています。
腹筋と背筋は、30歳代から老化がはじまり、運動不足などが加わると、筋肉はさらに衰えていき、やがて脊柱を支えられなくなります。姿勢が悪いと姿勢を保つために筋肉が緊張し、コリや痛みがあらわれます。痛みがあると運動しなくなり、筋肉がさらに衰えるという悪循環に陥りやすくなります。
また、運動不足が続くと筋肉が硬くなり、柔軟性が失われてしまい、可動域が減少します。すると腰を少し動かしただけでも、可動域の限界に達して痛みが生じるようになります。
腰痛予防と症状改善目的で体幹をしっかりさせる必要があります。
体幹を鍛える最初のステップは、ドローインという方法が簡単です。
丹田(おへその約6㎝下)を意識して凹ませ、深い呼吸をしていきます。
腰痛の改善だけでなく、姿勢の改善やウエストシェイプの効果が期待できます。
自宅で行われる運動として一番簡単なものはラジオ体操でしょう。
まじめに取り組んでみると適度に汗ばみしっかりとした運動になります。
そして外での日光を浴びる運動が望ましいでしょう。生物は日光のもつエネルギーを体に吸収し温熱効果で代謝を促し全身の生理機能を生き返らせます。

 

特に日光では紫外線の作用が重要です。
1.ビタミンDを活性化して骨を強くする
2.コロナ等ウイルスの殺菌作用
3.#セロトニンの分泌促進する作用があります
#(セロトニン:幸せ脳内ホルモンとも呼ばれBDNFを増やす作用がある)
外での運動として効果的なのがウォーキングです。
日本生産性本部の「レジャー白書2018」によると,1年に1回以上,当該スポーツをおこなった全国の人口を表す{参加人口}は、下の表の通りとなります。1)

 

 

体操やランニングが最も沢山の人が参加できるスポーツといえます。
ウォーキングを続けていれば、腹筋や背筋が鍛えられ、脊柱を支える力が高まり、硬くなった筋肉がやわらかくなります。
腰痛対策のウォーキングは、15~20分ほどから始めて、歩けるようになったら少しずつ距離を延ばしていくと効果的です。
この度スポーツ庁が新型コロナ対策「自宅や屋外で安全に運動するための注意事項」を公開しました。2)

 

【基本】感染予防のための基本的な対応
1. 手洗いの実施
2. マスクの着用
【準備】運動やスポーツを始める前に行うこと
1. 体温の測定
2. 体調の確認
【実施】ウオーキング・ジョギングを行う場合の留意点
1. 一人で実施
2. 場所は人が多いところを避ける
3. 他の人との距離の確保
【その他】留意点
1. 高齢者、基礎疾患のある人等は
運動やスポーツを行う前に、かかりつけ医に相談しておく。
2. 周囲の人への思いやり(エチケット)
と運動に際しても3密を避けマスク着用を勧めています。

 

新型コロナウイルスは飛沫感染で唾液に沢山含まれていることから、予防にはマスク着用が非常に重要です。
今年は新型コロナウイルスの影響で外出自粛が続き、体が暑さに慣れていない上に筋肉量が減り、脱水になりやすい状態になっています。
感染予防でマスクをつけて過ごしていることから、体内に熱がこもりやすく、マスク内で湿度が上がっているため喉の渇きが感じにくくなっています。
気温が上がる中でマスクを着けて走った場合、脳に届く酸素が少なくなり、判断力が鈍くなるため、汗をかく量が増えても、脱水状態など体調の微妙な変化に気付かず、熱中症になるおそれがあります。
長引く自粛生活によるストレスで自律神経に乱れが生じ、血管が収縮しているケースが見られます。血管が収縮した状態で息がしにくいマスクをつけて走ると、低酸素状態になりやすく、脳や心臓に十分な酸素が行き渡らなくなり、心不全や不整脈などの病気につながるリスクがあります。
マスクをつけて走ると、低酸素の状態になるので、アスリートが心肺機能の強化のため気圧の低い高地で行う強化合宿と似た状況と言えます。マスクをつけていないときと同じ強度の運動を行わず、走るスピードを落とすなどの対策が必要です。
マスクをつけて運動時にはこまめな水分補給が必要です。
新型コロナウィルスの特効薬やワクチンが出来るまでは上手な共存が必要です。
“感染させない、感染しない”為にはマスク着用が最も有効でしょう。
スポーツ時に、お互いの感染を防ぎながら呼吸に影響を与えない、スポーツマスクの開発が望まれます。

 

1) 日本生産性本部「レジャー白書2018」
https://www.jpc-net.jp/research/list/leisure.html

 

2) スポーツ庁 新型コロナ対策「自宅や屋外で安全に運動するための注意事項」
https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop05/jsa_00010.html

 

2020年5月28日付
北九州市医師会からのご依頼で記事を投稿しました。

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